皆さん、はじめまして。
私は「要約筆記」の団体に加入しているものです。ここでは「阿波女」と名乗らせていただきます。
2008年の秋、私は「要約筆記」と出会いました。きっかけは、NPO法人の要約筆記団体に所属している知り合いから、「こんなボランティアをやってるんだけど、あなたもやってみない?」と誘われた事です。
ボランティア自体には昔から興味はあったのですが、「ヨウヤクヒッキ?何それ?」という感じでした。要約筆記の「ヨ」も聞いた事がなかったのです。
知人にザッと話を聞いたところ、
「講演など色んな場所へ行き、話している事を自分なりに要約し、手書きやパソコンで難聴者や中途失聴の人達に伝える」という事でした。
知人は、「最近はパソコンが主流になってきているんだけど、パソコンに堪能な人が少ないの。私もタッチタイピングは出来ないし、打つのはすごく遅いし。あなたならタイピングが速いし、向いていると思って」と言っていました。
それを聞いた時、厚かましくも、瞬時に私は、
「おーっ、そんなのがあるんだ!面白そう!やりたいやりたい!私でも役に立てるんだったら是非やってみたい!」と思いました。
私はパソコンについての知識は最低限しかありませんが、文章を打つのは昔から大好きで、「速打ち」だけは自信があったからです。
その後、彼女の所属する団体の、PC要約筆記の様子を何度か見学させてもらいました。
小学校の体育館での講演会、手話講座などなど…。
「こ、これは私には無理かもしれない」というのが素直な感想でした。
だって、講演会で前で喋っている人のスピードは速いし、要約している人の事なんか待ってはくれないし(当たり前ですが)、しかも、なんだかすごく難しい内容の話をしているし、知らない専門用語とかも出てくるし!
そして、なんといっても、「長い話を短く簡単にまとめて要約する」という事の難しさを目の当たりにしたからです。
涼しい顔をしてタイピングをしていたベテランさん達を見て、私は「ポカーン(゜□゜)」としていました。
「打つスピード」が速いにこしたことはないけれど、それよりも重要な事は、「より分かりやすく、正確に、簡潔にまとめる事」だと分かったんです。 それまで私は、「打つのは速いからなんとかなるだろう」などと、大きな勘違いをしていました。
「ガーン…。打つスピード云々よりも、まとめるセンスの方がよっぽど重要なんだ。これは私には向いていないかもしれない。私は、速く打つしか脳がないのに…。」
ちょうどその頃、徳島市が開催する「要約筆記養成講座(初級)」が始まるとの事で(しかも無料♪)、知人に「まず、その講座を受けて基礎知識をつけてから、実際に活躍したら?」と言われました。
毎週2回の講座でした。回によって、内容も講師も違いましたが、実際に難聴者の方や身体に障害を持っておられる方のお話も聞けたり、とても充実した内容の講座でした。
それに、お友達も出来ました♪(^▽^)
その講座は「OHP・OHCでの手書き要約筆記の養成講座」でした。
毎回、要約筆記での情報保障がついていました。OHP・OHCでの手書きでした。
最初、「なんで要約筆記の養成講座やのに、いちいち要約筆記を付けるん?」と思っていたのですが、途中から、実は受講者の中には難聴者・中途失聴の方もいらっしゃるという事に気付きました。
そう、「難聴者と支援の会」の会員の方々です。
なぜ分からなかったかというと、中途失聴の方は見た目では全然分からなかったからです。
補聴器をつけていてもよく見ないと分からないし、人工内耳の方だったら、見た目では絶対分かりません。
喋りが堪能な方も多く、「え?ほんまに聞こえが悪いん?」と思った事もありました。
そして授業中、その人達を盗み見したところ、スクリーンを見ながら頷いたりしていました。
「そっか、こんな風にリアルタイムで難聴者の人達は情報を得ているんだ」と感じました。
「要約筆記者を育てるには、難聴者の助け無しにはありえない」という事を実感しました。
同時に、私も、講師の方の話を聞きながら、スクリーンをチラチラと見ていました。
「なるほど~、ああやってリアルタイムで話を短くまとめていくんだ」と思いました。
しかし、毎回私が思った事は、「こんな難しいこと、私は出来ん!ていうか無理!」でした。
なにをかくそう、私は「ど」が付くほど字が下手で、書くスピードも遅いし、しかも、いただいた教科書もなんだか難しい事がいっぱい書かれているし、「ああ~っ絶対無理っ!(>□<)」と思っていました。
情報保障として、要約筆記をする事の責任感を考えると、頭の回転が非常~~に遅い私には向いてないんじゃないだろうか…と、不安でいっぱいになりました。
入るなら、知人と同じ団体に、とは思っていたのですが、「やっぱり断ろうかな…」とも考えていました。
そんな矢先、もう少しで要約筆記養成講座が終わるという頃、「今までは見学だけだったけど、今回は実際に打ってみない?」と例の団体の方からのお誘いがありました。
その時の派遣先は、アットホームな雰囲気で、傍聴者も少人数で日常会話も多い内容だったので、初心者の私でも出来るかもしれない…という事で、誘っていただけたのかもしれません。
しかし!今まで何回か、PCでの要約筆記を見学させていただいていたとはいえ、実際に自分が打つとなると、頭が真っ白になって、「うわーーー!今なんて言うたん!?ていうか今の日本語何!?そんな言葉知らんよ~!!」
という感じで、思いきりパニックになっていました。
途中で、キーボードの上で数分間、手がピタッと止まったまま動かなくなった事を今でも覚えています。
でも、なんとか自分を落ち着かせて、ベテランさん達に助けられながら、自分が出来る範囲で頑張って打ってみました。すると、なんだかすごく充実した気分になったんです。
その時は、難聴者の方が少人数だったので、ご本人の前に表示用PCを置いていて、スクリーンは使わなかったのですが、最初にそのご本人が PCを見て、「すっごく分かりやすいです!」とこちらを向いて嬉しそうにおっしゃってくださいました。
私は思わずそれを聞いてニヤけてしまいました(笑)
そして、終わった後には、本当にありがとうございましたとお礼の言葉を何度もいただいて、私は心の中で、「いえっ、私はただの新人でございますっ、ちゃんと要約していたのはこちらのベテランの方々ですっ」と思っていたものの、それでも間近で、ご本人に「リアルタイムで会話についていけるのがとても嬉しかった」と喜んでいただけたのがすごくすごく嬉しくて…。ほわ~んとした気分になりました。
ベテランさんからも「頑張ったね」とのお言葉をいただいて、なんだかその日は晴れ晴れとした気分で、「あー、こんな私でも誰かの役に立てるんだー」と嬉しくなり、要約筆記をこれからも続けていこうかな、と思いました。
阿波女