第9回 要約筆記のこと

要約筆記ってみなさんご存知でしょうか?OHP、パソコン、手書きノートテイクなど方法はいろいろあります。このホームページの要約筆記の頁をご覧になってください。
 要約筆記とは「話の内容」を「その場で」書いて「伝える」ことをいいます。文字数でいうと話しことばの2~3割程度しか書けません。しかし書ける文字数が2割でも話の内容をできるだけ伝えようとするのが要約筆記です。

 テレビから、あるデザイナーの話が流れていました。
「僕はねえ、子どもの頃、成績が悪かったんですよ。ほとんどが2か3でね。でもね、美術だけは点数良くってね。温情点というか・・・」
 この話を要約筆記にしたらどうなるでしょう。この話は50文字ありますが、書ける文字数はだいたい10~15文字くらいです。さあ、どんなふうに要約筆記しますか。

 たとえばAさんは「子どもの頃 美術だけは成績良かった。」Bさんは「小さい時は美術だけ点が良かった。」Cさんは「子ども時代は美術だけ好成績」など人によって書き方は違うけれど、話の本筋しか書くことができません。
 聞き手は「温情点・・・」と言ったところで、『フフフ』と笑っていました。けれどそのことを書く余裕がないのです。皆がどっと笑った時に、なんで笑うのか知りたいとよく言われます。でも瞬時に書けない。また、本筋だけを書いたにしても少し遅れる、タイムラグが生じます。ここのところが利用者の不満であろうかと思うし、要約筆記者にとっても辛いところです。「要約筆記の限界」でしょうか。

 聴覚障害者の聴力や聞こえ方は人により様々です。だから要約筆記の利用の仕方も様々だと思います。どんな書き方が その人にとって適切なのか考えて書く必要があるのかもしれません。しかし利用者の聴こえの状況などによって多少の文章の加・減はありながらも、基本は「話の本筋を書く」ことが要約筆記だと思います。

 私が要約筆記を始めて10年経ちますが、その間にも要約筆記の考え方は随分変ってきました。最近は「聴覚障害者の権利擁護のための要約筆記」と言われるようになりました。
 約40年前、要約筆記は難聴者が集まる会合から必要に迫られて、自然発生的に生まれたと聞いています。それがだんだん発展し、難聴者が社会の中で当たり前の生活や仕事をしていくための要約筆記として広がりつつあります。
 たとえば健聴者との会議の中では、難聴者が他の人と同じように発言ができる要約筆記をしなければなりません。これはとても難しいことです。(職場の研修等でのノートテイクがどれだけ難しいか・・・)でも、そんな要約筆記ができるようになりたいと思っています。

 要約筆記によって難聴者のハンディを少しでも解消できたらと、そんな気持ちで書いています。要約筆記や要約筆記者を育てるのは 利用される方々です。厳しい意見を言ったり、たまには褒めたりして、私たちを育ててください。よろしくお願いします。  
                                              hana

 

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