第16回 難聴者の心理について①

難聴者は一般的に聞こえたフリをしたり、聞こえないままで、すごすことがよくあります。
そうするつもりもないのにそうしてしまう、そうせざるを得ない心理とでも言いましょうか。
相手の「面倒くさい」と思わせる表情や「イライラしている」ような仕草などを察知し、聞き返すことに臆病になったり、億劫にもなるのです。

 自分と相手の二人だけの会話の場合だと、まず、聞き取りやすい状況であることがありますが、自分が聞こえていなければ、あるいは分かっていなければ、会話が進みません。なので、自分が主となり、相手と会話を進めているなかで「エッ?」と聞き返さざるを得ないのですが、複数での会話の場合は、そうはしない、そこまではしない心理があります。

 どういうことかと、申しますと、自分が会話に入らなくても、A・Bさんが話していることで、会話は進み、経過と共に、おおまかな話の内容が後になって、分かったり、部分部分に聞こえてくる話の内容で考え、話題を探ることを出来るときがあるからです。

 一度、「エッ?!」と聞き返し、さらにもう一度、聞き返すことで、言葉の破片を少しずつ手に入れ、会話のヒントをさらにつかめたとしても、同時に、相手に不快感を与えているような気がするので、何度も何度も聞き返す必要性がない場合はそこまではしません。

 ただ、A・Bさんの間で既出の話題が、急に自分に、ふられた時には、聞こえていないことが多々あるが為に、「さっき言うたで!」とか、「物わかりが悪いなぁ~」と、このように言われることがあります。
そう言われることが、自分にとって、恥ずかしく、腹立だしく、悔しく、そして切なくなります。

 聞こえるまで何度でも聞き返しなさいとは、難聴者皆、よく言われるところですが、このような理由もあり、強く自分の中で聞き返すということをしないことがあるのです。

そして、最終的には、自分を納得させるのです。
「雑談程度については、聞こえなくても、差し支えないよな・・・」と。

これが、仕事の場合だと、そのような姿勢では、業務内容に差し支えるので、配慮を求めたり、態度を改めないといけませんし、聞こえるまでというより、分かるまで理解するまで、コミュニケーションをきちんと、とらなければなりません。

 僕の場合ですと、職場で休憩中、雑談をしている時に、自分にとって、聞き取りにくい声質の持ち主である、女性が雑談をしていても、よく聞き取れません。ところどころで、「あ、このことを言っているのだなぁ~」とか、聞き取れても会話についていくことは、大変難しいです。

 しかしながら、男性の声質であれば、比較的、聞き取りやすいため、その男性を通せば、聞き取りやすさを増し、さらに理解が深まるのです。もちろん、これは、僕の場合ですので、人によれば、女性の声質、いわゆる、高音だけが、聞き取りやすいとか、低音高音を問わず、全体的にもっと大きく喋ってもらわなければ聞き取りにくい人もいるわけで、一概にいかないところが、また難しいところです。

 雑談に要約筆記を派遣するわけにはいきませんが、そんな会話こそが、実は、本当に聞き取りたかったりするのです。

 P.S.「・・・出来る時がある」とか「・・・ことがある」と断定せず、曖昧性を持たせたのは、聴力の程度の個人差により、すべての難聴者に、この心理が適用されるものではないからです。

n.t

 

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